猫物語42 君の一念で、すべての運を生かせ!

 「オハヨウゴザイマス!」と爽やかな声が聞こえる。「今日は、ABコンツェルンの総師が挨拶に見えられます。どのように、お話を進めましょうか?」とチャンは、フランクを見上げた。「ABコンツェルンの総師は、ミスター・アルバートだったネ。」とギロリと、フランクは、チャンを見た。「いえ、トム様と言われておりました。とチャンは、はっきりと答えた。

 「えっ、トム、トムだって!トムと言ったのか?本当に!」フランクは思わず椅子から立ち上った。「ハイ、トムと名乗っておられました。」とチャンは、ビックリして答えた。(幽閉が、とかれたのか、友は生還したのか!それにしても、ABコンツェルンは破産したと聞いたが。友は、大丈夫だろうか?)とフランクは、トムを思った。

 ドアがノックされて、トムが入ってきた。静かな物腰にやわらかい眼の光、身体全体から醸し出される気品、そこに生まれ変わったトムがいた。「ABコンツェルンの総師のトムです。お忙しいところを申し訳ありません。」と丁寧に頭を下げた。トムの佇まいに、フランクは言葉を失った。「本当に本当にトムなのかい!トム、お久し振り!。」とフランクの顔が喜びでクシャクシャになった。「よく生還したネ。よく精進したネ。その姿を見れば君の努力の物凄さが偲ばれるよ!トムおめでとう!君は勝ったんだ!」とフランクは、涙で声を滲ませた。

 「何を言うんだ。二人でかわした約束じゃないか!どのような所でも本物の人間になる努力をしようと約束したじゃないか!私はそれを支えに全てに感謝して暮らしたよ!」と、トムははっきりと答えた。そこには、お互いを信じ抜いた魂の歌があった。

 「ところでトム、今の世界は、大変だ。

地球の温暖化による気候変動が激しいし、人間は、モラルを失って弱肉強食のありさまだ。全てに経済が優先されて、6人の大富豪が人類の半分の所得を得ている。

その現実を前に私達は、頭を抱えるしかないだろうか?

生まれた時に金のスプーンを持っていれば金持ちで、木のスプーンを持っていたら、生涯貧乏なんていう物語が、囁かれ始めている。

本当にそうだろうか?経済より何より優先されるのは、人権であるはずだ。その人権が後まわしにされている。」と、フランクは、トムを見て嘆いた。

 トムは、大きな眼を開けてフランクを見た。「フランク、これは人間の人権の戦だ。人間は、今のままでは、動物の域を出なかった。今こそ人間は真に人間になる為の行動を開始するのだ。私達は、これから茨の道に入るぞ!堂々と進軍するぞ!我らの行進に暴力のニ字はない。」と、トムは叫んだ。

 フランクは、アフリカの少年、少女兵の悲惨さを訴えた。果てしなく続く絶望の道に、希望はあるのか!どうやって希望を生みだすのか!と、吐露するフランクにトムは、真摯な指導者を見出した。

 (捕まえてきた少年達を優秀な兵士にする為に、少年達の生まれた村を襲わせる。そして、自分の母親を殺させる。殺せないと、お前の母親の片腕を切り落とさないと、お前も母親も殺すぞ!と脅される。そして、ナタを手渡される。

 彼は母親を救う為に母親の片腕を切り落とす。あぁ、その阿鼻叫喚の中で人は、ものになり下がる。止まれ!かつて鹿の王は、皆を助ける為に我が身を投げだした。そこには、ずっしりとこの胸に答える物語がある。

 少年兵の眼にあふれるのは、血の涙だ。姑息な輩は、残虐な行為を相手が自ら選ぶように仕向ける。片腕を切り落とされ、母親は失血死した。母親を救う為にした行為なのに、母親は死んだ。オレは何て非道なことを!オレは、オレは、オレの心は、壊れた。だから、おれは殺人鬼となった。優秀で真面目で良い人程、優秀な殺人鬼となる。

 止まれ!私はその前に身を投げだそう!虎の前に我が身を投げだした鹿の王の様に!相手は、私の振る舞いに身じろぎするだろう!目を見張るだろう。(これは、想定外。これは、計算ミス。オレは、どうしていいかわからない!オレの心に起きている、このさざなみはなんだ。この胸の泡立ちは何だ。これは、オレも人の子ということか。と彼らは愕然とするだろう)と、フランクは思った。

 徳というものがこの世にあるなら、私はその徳の衣を身にまとい、私は折れたこの腕で君を引っ張り上げよう。そこにこそ感動がある。痛みに耐えて行動する処に感動が生まれる。

 少年よ!血の涙を流した君の歴史を塗り替えよう!様々な支援の手は君の上に差しのべられるだろう!民族を越え、宗教を越え、国境を越え、私達は、人間として真の人間として手をつなごう。

 君が人間に優劣があると主張するなら私は、君と僕は同じ人間であることを証明しよう。それが私の人生だ。)と、フランクは語った。

 少年よ!少女よ!もう泣かせはしない。かつて少年であった。かつて少女であった。あなたの心を救おう。友を励ますことで君が救われる一人の人の心を殺したのなら二人の友を励まそう!三人の人の心を殺したのなら地球の人類の為に働こう!苦しんだ分だけ、苦しんだ人の心が分かる。悲しんだ人の心が分かる。

 少年よ!少女よ!人は変われる。少年よ!少女よ!一度深みにはまっても、てずるい大人に負けるな!倒れる度に立ち上がって人生の暁鐘の鐘を打ち鳴らせ!そこにこそ悲哀を喜びに変えゆく君の人生の序曲の始まりだ。君よ!戦え!お金のありなしに負けるな!お金の手下になるな!お金を手下にしていけ!君よ!哀しみに負けるな!一人ぼっちで泣いた日々に負けるな!君よ!トラウマに負けるな!敢然と我を忘れて相手を励ます時、トラウマの薄皮は剥がれていく!こずるい輩は君がのたうって自滅していくさまを待っている!君よ!負けるな!

  明日の朝には美しい花も咲く。強くなって君よ!強くなって昴然と胸をはろう!どこからでも、かかってこいと胸をはろう!そしてあなたも、この輪の中にお入りなさいと声を掛けよう!ひどいことを、むごいことをされたことを憎むのは簡単だ。君よ!ひどい事をむごい事をされてもそれ以上に深みにはまらない為に勇気を持ってその一歩を踏み出すのだ。笑顔で憎しみの寵児には、ならない!と、ファンファーレを打ち鳴らせ。

 君よ!その負けてたまるかが、信用を生む!君よ!その努力が人生を開く!君よ!あきらめるな!必ず必ず幸福になれる。その勝利の日を信じて私は、生命尊厳の対話を今日も進めるのだ!)と、トムは強く思った。 

 振り返ってトムは、フランクを見て微笑んだ。「フランク、一人で悩まないでくれ!私が側にいることを忘れないでくれ!共に祈るは、世界平和だ。それも力の統合ではなくして民衆の合意に基づくものでなければならない。私はフランク、君を信じるよ。と同時に私は私を信じよう。

世界平和の基準は虐げられた底辺の人々だ。私は、フランク、君を頼りにしているよ。」とニッコリとトムは、フランクを見て微笑んだ。フランクの胸に熱いものが突き上げた。(そうだ!始めから困難があることなどわかっていたではないか!困難の海の中をスイスイと波乗りを楽しむぞ!)とフランクは思い友を見上げた。そこにかけがえのない友がいた。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください