こころ便り 猫物語47 それでも私は、君に感謝する!

オレは、猫の孝太郎。妹に夢が、いる。今日は、花見。オバアが、男に捨てられたと聞いたので参加した。

 おもいのほかオバアは、元気だった。オレは、笑っているオバアが不思議で「元気やん!」

とおどけて鳴いてみた。

 オバアは、「70で捨てられたのが幸運ネ! 60は、若すぎたよ。もう一仕事しようと思えたもの。彼も彼女もしあわせを祈っているよ。彼らが成功して大邸宅に住んでも私は、誇れる自分でありたい。」と言って、オバアは、ニッコリ笑った。

 オレは、(男を恨まないのか?)と思った。オレは、最後まで文句一つ言わず懸命に生きてきたオバアが不憫だった。

 オバアは、続けて言う。「養われなかったことも良かったネ!生活水準が変わらなかった。これは、大きいよ!」

 友人達は、オバアがカワイソウでよく電話してくるし、よく覗きにくる。オバアが人生に絶望して死なないか心配なのだ。

 オレは、オバアのしたたかさを知っている。オバアは、なかなか根を上げない。オバアは思いがけない処で蘇生する。今度もそうだ。

 オバアは、男に捨てられた時、一歩も歩けなかった。今、スタスタ歩いている。オバアは、ショックをエネルギーにしてしまうのだ。

 オバアは、夫に捨てられたと知ったとき、号泣した。号泣は、慟哭となった。そこからオバアは、立ち上がった。

 相対的幸福から、絶対的幸福へオバアの思考は、移動した。そのとき、オバアは、夫に感謝した。

 深い悲しみは、更なる高みへオバアを誘うものだった。オバアは、あまりの苦しさに険しい道を突き進んだ。オバアは、憎しみの道を歩きたくなかったのだ。オバアは、暴力にNoと言った。

 オレには、オバアの歌がきこえる。

(冷蔵庫の野菜室にハッサクが、3コ転がっている。オサイフに1円玉が5コ 10円玉が2コ

 それでも 私は 目を ギラギラさせて 

 この地球を 守ろうとしている

 ガンで もう寿命がないときに

 気合でガン細胞を喰いちぎる

 70で夫に捨てられる

 それでも 私は 目をギラギラさせて 

 地球を 守ろうとしている

 私が 夫を 許したのは

 この地球を 守るためだ

 私が 暴力でテロリストにならぬためだ

 暴力では 何も変らない

 私は 生命を抱きしめて

 生命の賛歌を歌ってやる。

 私は、この生命のすばらしさを、歌ってやる

 君が 暴力を 肯定して

 生命を ふみつけに するとき

 私は、動かない足で 歩いてみせよう!

 君が 暴力を 生命の上に 

 ふりおとすとき 

 私は、人間の英知を 信じてみる

 君よ!春の歌が聞こえないか?

 そんなに 人生は、きれいごとでないとの給う

 君の言葉に私が答えてやる

 君は 知っているのか?

 きれいごとで 生きる人間の すさまじさを 

 この生命のすばらしさを

 君よ!さぁ 行くぞ!

 地球の未来を握って

 生命のすばらしさを 抱きしめて!

 未来に飛び出すぞ!

 米びつに 米が 3K

 まずは 腹いっぱいだ

 ニギリメシを 食べて

 空を とんでやろう!

 きっと オバアは

 くだらないことを 考えている

 きっと オバアは

 しあわせなのだと 孝太郎は 思った。