猫物語31 太郎物語

オレは猫の太郎。冬になって寒い日が続いた。オレは、毎日、エアコンの効いた部屋でヌクヌクと暮らしていた。人間の母さんと人間のバアチャンとオレ ゆったりと暮らしていた。

それが、外が寒すぎると外猫が、2匹が、家猫になったのだ。その上にオレのゲージがアイツ等の部屋になったんだ。

ナナ!聞いてくれよ!あのゲージは、オレが病院から帰ってからズーッとオレの部屋だったんだ。そして、そこはオレのトイレでもあり、オシッコシートの上がオレのトイレだったんだ。

だから、オレは怒った。怒ったオレは人間のバアチャンの布団をオレのトイレにしたんだ。

人間のバアチャンは肌布団と子布団に毛布2枚を布団にしていた。

人間の母さんは、オレが粗相をしても何も言わずドラムの洗濯機を回し、1時間程で家の中の物干スタンドにおおいかぶして干していた。この家は、エアコンが効いてるから3時間程で乾くんだ。

オレは、1日の内に4回人間のバアチャンの布団でオシッコとウンチをした。人間の母さんは怒りもせず淡々と洗濯しては、干していた。

人間のバアチャンは、上掛けがフワフワになって喜んでいた。ところがよ!5 回目のトイレをオレがした時、人間の母さんはオレをしっかり抱っこして玄関の戸を開けてオレを外に置いたのだ。

オレはビックリした。何が起こったのかと思った。オレの後ろで玄関の戸が閉まった。オレは(しまった!)と思った。なぜなら、オレは、その戸が永久に開きそうもなく思われたのだ。

オレは困った。オレは後足の関節から下が両足ともない。家の中のフカフカの絨毯の上なら何の不自由もない。でも目の前の地面は石ころだらけだ。

オレの薄い後ろ足の皮膚は、すぐにその石ころで破れ出血するだろう。オレは、立ちすくんだ。オレは、目眩がした。「どうしよう!」オレのイタズラ、いや、抗議行動が過ぎたのだ。

いつまでたっても玄関の戸は開かない。オレは決めた。次に戸が開いたら家の中に飛び込もう。相手の出方を見る余裕は無い。(とにかく飛び込むんだ!)オレは心の中で何度も繰り返した。

戸が開いた。オレは飛び込んだ。そして、そそくさと悠然とオレの場所にエアコンの下の座布団に戻った。

「助かったぞ!アア、あったけえ!」そう、ボーッとしているオレの前に人間の母さんの手が伸びてきた。オレを抱えた人間の母さんは、トイレへ。オイ、オマエ、信じられるか、トイレの床にはオシッコシートが敷かれていて、オレはその上に下ろされたんだ。

それからのオレは1日5回のトイレトレーニングに励まされることになった。もし、人間のバアチャンの布団で先に用を済ませたらオレは寒いトイレのオシッコシートの上で延々といることになる。人間の母さんは毅然としていた。

オレはまた(しまった!やられた。)と思った。オレがオシッコシートでしっかり用を足しトイレの中から「出たよ!」と人間の母さんに合図すると、トイレの戸が開き、母さんの手が伸び、オレは母さんにしっかり抱きすくめられる。オレは母さんに抱きつく。母さんに頬ずりする。これはオレの至福の時だ。オレは母さんが大好きなんだ。

極めつけは、オレは夜、母さんの布団に潜り込むオレは、母さんに抱かれて眠る。けれど母さんは、寝苦しくなるとオレは母さんに布団から押し出される。「母さんのケチ、マア、ショウガナイカ!」とオレは納得する。

オレは、今、天上をフワフワしている。オレは右耳たぶが化膿して病院に預けられて、しょうもないことで死ぬことになった。何があったのかは、人間の母さんは知らない。イヤ薄々は、気づいているかな?

人間の母さんは、医者からオレが朝に悲鳴を上げて死んだって話を信じたのかな?

トンダ、ヤブ医者だ!

人間の母さんは、静かに静かに法華経を唱え、七日七晩お題目(南無妙法蓮華経)を供養してくれた。オレは庭の隅に埋められた。

オレは、思う。

あの日、稲刈り機で後足を両足とも刈られたオレを助けてくれた人間の母さん

お金がなくて分割でオレの治療費を払った人間の母さん

どんな時も微笑みを絶やさなかった人間の母さん。

オレは忘れないよ!

あなたが祈りの時に、オレが次は人間に生まれてきますようにと祈ってくれていたこと。

忘れない!

母さん、人間の母さん!

折れた腕で相手をどこまで引っ張り上げられるか!

それこそが恩師の真骨頂だ!

私もそうありたいと行動し続ける人間の母さん!

オレが今度人間界に生まれてくる事が出来たら、オレも人の為に、地球を守る為に頑張るよ!

だから、待っていてね!

人間の母さんの前にカワイイ男の子が現れたらそれはオレだ、オレだよ!

人間の母さん、また会おう!

待っていてくれ!

太 郎

 

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