猫物語43 我が一念は、世界を動かす!

 足の裏がザクザクしている。私は死の歩みを感じながら立っている。(来年の今日、私は生きているだろうか?_)私は闇に問う。

 返ってくるのは、不気味な静寂だけだ。

 (足元から忍びよる葬送の序曲を喜びの曲に変えられるのか!お前が本物か、どうかが問われる問題だ!

 今日、生命の灯が消えるかも知れないときにお前は、前を向けるのか!下を向いて嘆いてもかまわないぞ!私は不運の連続だったと嘆いてもかまわないぞ!

 そのお前の背の痛み、そのお前の眼の痛み、そのお前の頭の痛みは、お前の生命から発するものであるぞ!

 その痛みにお前は、音を上げてもよいぞ!さすれば、葬送の不信のセレナーデは、すらすらと流れていくだろう!

 なぁ、お前!お前の人生は、大変だった!なのに、今、お前を待っているのは、死の葬送の行進曲だ。いかに不屈のお前でも今度ばかりは、下を向いてため息をつかないか!

「もうだめだ」と、食いしばった歯のすきまから「ギブアップ」のサインを下さないか!

 なぁ、お前、この現実を前にお前はひざをつき、

くずれおちないか!もう、よい!誰もこの生死の苦しみを前に後退するものぞ!

お前だけではない!皆、そうだ。運命の前にひざまづけ。明日には、お前の葬送の曲が流れる。

 「カワイソウに!まだ、若いのに!いいことは、何もなかったわ。カワイソウに!」と、人々は、泣くだろう。なあ、お前。死のとばりを前に、我が人生を悲しめ!悲哀に流されよ!誰もお前を責めはしない。眼も背中も頭もズキンズキンと痛かろう。

 なあ、お前、我が軍門につき従え!世界平和などあり得んのだ。人間は変われんのだ。もう、あきらめよ!誰もお前を責めはしない!私の苦悩の生死流転の世界が永遠に続くだけさ!なぁお前!お前の正義の剣を私に渡し給え!さぁ、お前!我が軍門に下るのだ!

 その痛みの前に、その高熱の前にひれふすのだ!お前の前頭葉は崩壊寸前だ!よく、ここまで私を相手に戦った。褒めてやろう!もうよいぞ!その死の葬送の曲に乗るがよい!私の手下をお前の迎えにやろう。

 お前の絶望を前にブラックホールの蓋が開く!なぁ、お前、よく戦った!もう、よいぞ!私の前に屈服せよ!私の死の杯を受けとり給え!明日にも、足の裏のザクザクは、全身を包むだろう!お前の全身は死の衣をまとうだろう。薄く開いた眼にバラ色の人生をかりそめに見せてやろう!

 後は、お前は、真っ黒になって堕ちていく。生死の大海に溺れてゆくのだ!永遠に苦悩の生死の反復を始めるのだ。なあ~に、永遠に続いて来た道程だ!お前が悩むことではない。

 やはり、駄目だったな!惜しい所まで攻めていたが、お前も自分の心に負けたのだ。ああ、私はほっとしたぞ!人間も変われるのだと、お前を見て

思いもし、感心もしたぞ!だから、もうよい!私の軍門に下れや!生死の大海を、また苦しみから苦しみへ流転していくだけさ!」と闇の声は私に囁く。

 足の裏がザクザクする。呼吸も浅くなってきた、寝返りもうてない、起き上がることも出来ない。出来ることは、ただ一つ祈ることだけだ。私は負けたくない。こんなことでは死にたくない。こんなことで死んでたまるか!これでも私は、永遠の生死流転を永遠の歓喜の軌道に導いていくぞ!身体の状況に負けてたまるか。背中の痛みは、眼の痛みは、頭の痛みは、私の過去、現在の羅障を消しているぞ!頑張れ、頑張れ私!

 私と同じ境遇にいる人間が五万といるぞ!私は、その先頭にいるものだ!だから、踏んばれ!師は見ている。私のがんばりを、私の戦いを!群雄割拠だ!戦うぞ!私は、負けないぞ。この身が腐れても、私はお前の軍門には下らない。

 死よ!来い!大雪崩でやってこい。私は大口を開けてお前を喰ってやる。喰いちぎってやる。この私を飲みこもうなんて100年早いぞ!この指の先の先までくされても私は、お前の軍門に下らない私の悲しみの人生は、私のせいだ。お前などの預かり知らぬことだ。

 痛みよ!私の全身をはいまわれ!それでも私は屈服しないぞ!私は余裕で自分の人生をかっ歩するぞ!我が人生の一歩が世界平和に直結していることを私は熟知している。

 浅き呼吸よ!息をふき返せ!深き森の呼吸を思いだせ!まだまだ音を上げないぞ!

 足の裏のザクザクが止まる。すべての痛みが止まる。呼吸がもどってくる。寝返りがうてるようになり、起き上がれるようになる。歩けるようになる。食欲がもどってくる。生命の底から歓喜が突き上げてくる。

 祈りに祈った日々。朝、昼、晩、祈った!祈った!南無妙法蓮華経は、獅子吼の如し!生命は回転する。私は苦悩の生死の大海を突きぬけて歓喜の生死の大海に出たぞ!感謝!葬送の曲が遠のいていく。代わりに歓喜の序曲が聞こえる。

 猫が心配そうに私を見ている。大丈夫、大丈夫だ!私は勝ったぞ!私は師の想いに応えたいと耐えた。忍んだ。ふんばった!

私の全身からすべての悪い兆候が消えた。

自然治癒の爆発が起こったのだ。正常細胞が、ガン細胞を飲み込んだ。感謝、感謝!

 人生は、回転する。私は、生命の底で七転八倒して力をつけた。頼むは、自分自身だ。強くなってたくましくなって私は、我が人生をかけ登ろう。恒久平和への道をかけ登ろう。そして、今、私は、ガン君、君に最大に感謝しているよ、ガン君、ありがとう!

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