猫物語2 森を抜けて丘の上で

大将は子猫をやさしくながめておりました。

大将「あっ!これこれ。
___そんなに泣いたら腹がへるぞ。
___それに ほっとするのはまだ早いぞ。
___わしは オチビチャンに
___チャンスを一つ上げるだけじゃ。
___この冬を こせるかどうかは
___オチビチャンしだいじゃ。
___さあさあ この丸藥を一つお食べ。
___3回分のご飯になるはずじゃ。
___食べたら出発するぞ。
___さあ、わしに背中におのり。」

子猫はおっかなびっくり涙も引っこんでしまいました。
そして、オズオズと大将の背中に乗りました。

大将は「ようし!しっかりつかまっておれい。
___これから森を出るぞ。」

と、子猫に声をかけると一目散に森の境界を目指して走り始めました。
大将は走ります。
そして森の境界に来ると「イノチ タカラ」と呪文を唱えました。
すると、あら不思議。
森の境界に大きな虹のトンネルができました。
大将は、虹に「ありがとう。助かったわい。」
と言いました。それを聞いた虹は「こちらこそありがとう!気をつけて行ってらっしゃい。」と言いました。

大将は、今度は人間の作ったアスファルトの道を、一生懸命かけてゆきました。
やがて小高い丘の上にでました。
そこで大将は、子猫を背中からおろしました。
大将は、丘の下に広がる光の海を見ながら子猫に言いました。

「オチビチャン 見てごらん
これが オチビチャンが行く人間の世界じゃ。
わし達猫は もうずいぶん昔からペットとして人間と共に暮らしてきた。
人間なしには 猫の生活は考えられん。
なあ、オチビチャン
この光の中に、オチビチャンの家を見つけるのじゃぞ。
見つけられねば、オチビチャンはそれまでじゃ。
オシマイじゃて。」

大将は話しながら胸が苦しくなって、子猫を抱きしめました。
子猫は小さく泣きました。
大将は自分に言い聞かせるように

「いや、どこかにオチビチャンに
ぴったりの家があるわい
心配するな!」

と言いました。
更に大将は続けました。

「オチビチャンは、これから長い旅に出るわいのう。
その時に一番大切なことは、自分をいつも味方にすることじゃよ。
オチビチャンがオチビチャン自身をいつも信じてあげることじゃ。
オチビチャンはオチビチャン以外の何者でもない。
どんなに一人ぼっちになっても
自分を味方にすれば、二人じゃて。
わかったネ、オチビチャン!」

と子猫にやさしく言いました。
と、そこへ ふくろうのポウがやってきました。

ふくろうのポウ「おや、大猫の大将じゃないのかい。」

と言われて、大将はふり返りました。