猫物語3 目指すは小さな家

大将「おや、ふくろうのポウ殿。
___珍しいのう。
___ポウ殿はてっきり
___ふくろうの王国にばかりいると思ってましたわい。」

ふくろうのポウ「王国も今ではとてもせちがらくて
ときおり息抜きをしないともちません。
でも大将はなんでここいいるの?」

大将「わしはこの子(子猫)の寝ぐらを
___探しているところですわい。
___どこかにいい所はないかいのう。」

ふくろうのポウ「ウ〜ム。(しばらく考えて)
___一軒だけなら心当たりがあります。
___もう、二匹猫がいますが
___なんとかなるでしょう?
___この子(子猫)が強ければ大丈夫でしょう。」

大将「なんせ、強さに縁のない子(子猫)でしたのう。
___ピイピイ泣いてばかりで大丈夫かのう。」

ふくろうのポウ「大丈夫ですよ。すんなりとはいかないでしょうが。
___v心を鍛える訓練にはなります。
___強くなることでしか、この子(子猫)の生きのびる道はありません。
___一つ強くなれば、次の道も開けるでしょう。
___変われなければ、もう、この子(子猫)はおしまいです。
___この冬はだめでしょう。」

大将「そうですわい。
___おっしゃる通りですわい。
___自分を信じる力が弱くては、生きてはいけませんわい。」

ふくろうのポウ「それでは今から、そこにお連れするがよろしいですな。」

大将「お願いしますわい。」

ふくろうのポウ「ウム。(軽くうなづいて)では、さっそく。」

と言うと、ふくろうのポウは地面をくちばしで三回コツコツとつつきました。
そして「イノチハ タカラ」と呪文を唱えました。
するとあら不思議
目の前に虹のトンネルがあらわれました。

ふくろうのポウ「さあ、大将
___このトンネルを抜けてお行きなさい。
___トンネルを出たら目の前に大きな家と小さな家があります。
___目当ての家は小さい家です。
___まちがっても大きな家ではありません。
___くれぐれもまちがえませんように!
___子猫ちゃん、まずは必ず小さい家に住む人間に気づいてもらうことです。
___気づいてもらわねば何も始まりません。
___君(子猫)は大きな声で、泣かねばなりません。」
___君(子猫)のすべてをかけて!
___では大将、いってらっしゃい。
___よい風が吹きましょう。」

大将「ポウ殿、ありがとうございますわい!
___では、行ってまいりますわい。」

子猫は「ありがとう。」と小さな声で言いました。
大将の背中に乗って子猫は、あっという間に虹のトンネルをくぐり抜け、大きな家と小さな家の前に着きました。

大将は、子猫を背中からおろすと言いました。

大将「オチビチャン、わしはここまでじゃ。
___これから先は オチビチャンの力じゃ!」

子猫「エーッ、嘘だ」

大将「よいか。しっかりせい。
___家は小さいほうじゃ。
___まずは、そこに住む人間にオチビチャンの事を知ってもらうことじゃ。
___まずは大きな声を出すことじゃぞ。
___わしはいつもオチビチャンを見ておる。」

と、言うなり、大将は虹のトンネルに乗って帰ってゆきました。
あたりには、まっ黒な静寂が広がりました。
子猫はまっ黒な闇の中で一声泣きました。

「ギャシ ギャシ」としゃがれた声で泣きました。
それから小さい家の床下にはいりこんで
「ギャシ ギャシ」と泣きました。
それと同時にパチパチと小さな家の電気がつきました。