猫物語40  世界は君の成長を待っている。

 彼が11回目の服役から帰ってくる。私は財布の1円玉を見ながらどんなに困っても彼に困った処を見せてはならないと思っている。仕事は、なかなか見つからないだろう。その間を笑顔で乗り切らねばと思う。

「仕事がなくて困っているのだ。」と、言うのは簡単だ。でも誰がその言葉を受け止めよう!「困っている。」と言った途端に「これ以上は立ちいりません。」と言われるのがオチだ。

 だから、私はどんな時も歯を食いしばって生きてきた。そんな私だからこそ他者に関わる時は、相手を全身で受け止めて励ましてきたのだ。私は生半可な覚悟で人に関わったわけではない。

 「人間に絶望している。」と彼は暗闇の底のような眼をして呟いた。私はその絶望を叩き破りたいと願った。

 彼が11回目の服役を終えて帰ってくる。もう、彼の両親はいない。親戚にも塩を蒔かれている。一度、道をそれるとなかなか王道には戻れない。蟻地獄のように深みにはまる。塩のつぶても永のつぶても飛んでくる。

 更生したい気持ちの先に孤独がある。孤独が孤独のままならば、まだ、救いようがある。孤独が孤立と仲良しになったら人は暴走する。私は、その日々を師を想い耐えた。その、闇の中で自分の胸に希望の火を灯し続けた。

 私は思う。

 私は彼の幸福なくして世界平和はないと思っている。今、目の前の1人の人間の涙を拭えずして明日の世界はない。道を外れた人間とガッチリ四つに取り組むということは、自分も一緒に更生の道を歩くということだ。誤解も曲解もあるだろう。それも覚悟の上のこの道だ!

 道なき道にわけいって大いなる実を見つけたとき、私は喜びの声を上げる。彼、彼女の眼に喜びが宿るとき、私は人間に生まれてよかったと思う。あの、やさぐれた眼を見て引き返さなくてよかったと思う。

 地域で犯罪者を更生させようというのは簡単だ。実際に本気でそう思っている人間が何人いるのか?ズルズルと再犯が続けば「ああ、しょうがないな。」だ。それが孤立の果てに暴走した出来事だとは思わない。

 彼が帰ってくる。11回目の服役を終えて。前向きに希望に燃えて出所してくる。その想いが蔑まれ、孤立の中で消えていく。そして、再犯に至る。そう、させてはならない。私は、たった一言、言ってある。「地獄の底も一緒だからネ。」と。いい時も悪い時も変わらずにだ。

 夜明けに太陽と共に目覚め、夕べに山裾に落ちる太陽にあいさつしながら、私は、彼と彼女とガッチリ握手する。絶対にあなたを孤立させない。一緒に悩んで一緒に苦しんで歩いていこう。

 したり顔で、相手の話を聞きながらお腹の底で(私はあなたと違う人間)だと思い続けているような偽善者には、私はならない!君の幸福なくして世界平和などあるはずがない!

 だから、君よ!下を向かないで!君の涙に溢れた人生を喜びに変えよう!そして、君よ!友と肩を組みあい共に歩いていこう。きっと、その道に美しい花が咲く!私は君の足元の草をむしり続けよう。

 君も私も同じ人間だ。共に麗しい人間として苦しむ友がいたら常に麗しい連帯で飛んだり跳ねたりしたいものだ。君よ!前を向こう。空にはトンビも飛んでいる。

 当分、君は苦しみの海に沈むだろう!その時に君よ!焦らないでくれ!挫けないでくれ!毅然と立つ、君の前途を祝う言葉の中に「出所してきたら迎えには行きましょう。でも、そこまでです。」とあったとしても君よ!人の冷たさに臆するな!その冷たさも君の心で熱湯にしていこう!

 支援がいるのは、ここから先なのだ。ハローワークひとつにしても一緒に行って彼と一緒に現実を感じてほしいのだ。止まれ!私達は彼等の支援がなくても無から有の人生にしてみせる。

 自分に負けないことが君の後に続く人列にエールを送れる唯一のことなのだ。彼の後ろに続く人列は幾重にもなるだろう。彼が立ち上がることが大事だ。彼の後ろに人がいる。

 国会でやったやらないで忖度している人達は、何もそんなことがしたくて最高学府を出たわけではないだろう?あの青雲の志は、まことしやかな嘘をつくためのものではないだろう。君よ!負けるな!ここは歯をくいしばって這い上がれ!君の周りのいじめの輪が幾重とりかこもうとも私は君を守る!

 共に全世界を相手にして、しっかりと目を凝らし世の善悪を見極めよう。君よ!負けるな!財布の中に1円もなくても心意気で生きてゆけ!

 君よ!負けるな!私は母の介護をしている。私と母は血が繋がっていない。それに私と母は色々あって自分自身と戦った。私から見て母が仏様と見えた日、私の人生は大きく展開した。私は新しい次のステージに立ったのだ。「ああ、あなたと親子になれて、なんたる幸運、なんたる軌跡、私は、あなたに感謝する。」と私は感動した。

 だからこそ、私は君に言えるのだ。自分をとりまく環境を自分が変わることで変えてゆこう!そこにこそ世界平和がある。そこにこそ世界不戦への直道がある。

 彼が帰ってくる。 11回目の服役を終えて。希望に燃えて帰ってくる。私は静かに待っている。その静謐の底力を私は信じている。

 君よ!いつか必ず喜びの人生が待っている。君よ!その日に向かってベートーベンの歓喜の歌と共に歩いていこう!君よ!負けるな!君よ!挫けるな!君の後ろに何万もの友がいる。いい人も悪い人もいるだろう。でも、君よ!覚えておいて欲しい。君が変わることで敵も味方になる。

 だから、君よ!励め!11回も服役した者の底力を見せて欲しい。何度、打ちのめされても、立ち上る人間の軌跡を見せて欲しい。

 君よ!負けるな!君よ!挫けるな!どんな忘波も難破した船の上でも私は勝利の歌を唄ってみせる。君よ!共に肩を組み合い、人間党のさらなる発展を共に祈ろう。君よ!行くぞ!人類の幸福の為に生きる人生を勝ち取るぞ!エイエイオー!

 私は君の出所を喜びの勝鬨を上げながら待っている。