ゴトゴトゴウゴウ家の外では、激しい風の音がします。小さな家の女の人は、思わず窓を開けました。彼女の顔に風のつぶてが当たります。「木枯らしが吹いている!」彼女は、びっくりして叫びました。(こんなに木枯らしが吹いたら、子猫が死んでしまう。)と思った彼女は、姉に電話をかけました。
ルルルー「あっ!お姉ちゃん!外にもう木枯らしが吹いている。子猫が死んでしまう。どうしよう!」
姉は、電話口から聞こえる妹のけたたましい声にムッとしました。そしてぶっきらぼうに「えっ、どうしたの?」と答えました。
妹は、ただオロオロと「子猫が死んでしまう!」ばかりを繰り返しています。姉は、またかとうんざりして「あなた!また、猫を飼うつもりじゃないでしょうね!」と言いました。
更に姉は、少し声を荒げて一気にまくしたてました。「別にその子猫が死んでも、あなたに関係ないでしょ。自分の頭の上のハエも追えないのに、何を言ってるの。自分の事をよく考えなさい。」と言って姉は、ガチャンと電話を切りました。
妹は、切れた受話器を握り、何度も髪をかきあげました。
「子猫が、死んでしまう!」と言って彼女は、畳につっぷしてしまいました。彼女は、心の中で子猫が死んでいくさまを色々思い浮かべました。もう、彼女にとっては、子猫の死は関係ないどころか、彼女の心のど真ん中でした。
彼女は考えました。(きっと、私は、木枯らしが吹くたびに死んだ子猫を思い出し悔やみ続けるのよ!もう、嫌、イヤ、私の浅い心の底は、子猫一匹で手一杯なんだわ。飼えないんじゃなくて、飼うために私は、何をすればいいんだろう。もう少し節約できたら子猫一匹ぐらい飼えるかもしれない!)
彼女は、完全に子猫を飼おうと腹を決めていました。その間も家の外では、木枯らしがゴウゴウと吹きあれています。彼女は、もう心の中で子猫を抱きしめていました。