子猫は、おなか一杯になると今度は眠くなりました。
子猫はまた、よもぎの森に入りました。
お日様はウラウラと暖かく、子猫はうつらうつらしました。
と、その時です。上の方から
「オレは、カラスのゴンだけど、お前は何をやってるの?」
と声がします。
子猫は、びっくりしてよもぎの森から顔を出しました。
外では電線の上にカラスがいました。
「オレはカラスのゴンだけど、お前は何をやってるの?」
とカラスのゴンは、前と同じことを繰り返しました。
子猫はあわてて自分を飼ってくれる人を探していることを告げました。
カラスのゴンは
「それでお前は寝てるわけ? お前の頭はかざりか?」
と笑って言いました。
子猫は小さの家の女の人に断られて困っていることを訴えました。
カラスのゴン「あっ、はん!
________それでお前そこで寝ていたらどうするの?
________本当にお前の頭は飾りじゃないの。
________もう、そろそろ冬が来るというのに。
________冬が来たらお前は凍えてしまう。
________もう、おしまいよ。」
子猫は言われている意味がつかめず、ポカーンとしていました。
カラスのゴンは、もうすぐ氷の王様が空を支配することを子猫に教えました。
カラスのゴン「で、お前はどうするの?」
子猫「わからない」
カラスのゴン「そん小さな家の女の人に、飼ってもらうしかないぜ。」
子猫「器量が悪い、声が悪いと言われたよ。
もうどうしていいかわからない。」
と言って、子猫はビビー泣きました。
カラスのゴン「お前の頭は飾りじゃないの。
________泣いてどうなるものなの。
________器量も声も悪いから、しょうがないじゃないか。
________でも根性なしとでも言われたわけ?」
子猫「ううん、無理と言われた。」
カラスのゴン「無理か。
________きっとそれはお金がないんだな。
________貧乏だってことだ。」
子猫「貧乏?」
カラスのゴン「人間の世界じゃ、金を一番持っているやつが偉いってことになってる。
________金を持ってないと、何もできないと、人間は皆そう思いこんでる。
________あっ、そう。
________その女の人は、貧乏なのか。」
子猫「だったら、もうだめ。」
カラスのゴン「いや、お前、頑張れば飼ってもらえるぞ。」
子猫「なぜ?」
カラスのゴン「お金なんかそんなになくても、知恵があれば楽しく生きていける。
女の人がその事に気がつけば、お前は飼ってもらえるさ。」
子猫「どうやって、女の人に気がついてもらうの。」
カラスのゴン「そうさ、なぁ。
________どうするか。
________ちょっくら、木がらし君たちに一吹きたのんでくるか。
________で、お前はがんばれるの?」
子猫「何を?」
カラスのゴン「お前な!
________お前のこれからのことだぞ。
________オレ、ハラタッテキタ!
________もう、オレ、知らねぇぞ!」
子猫「ピィピィ泣く。」
カラスのゴン「お前、泣けばいいと思ってる?」
子猫は泣きながら「ヒックヒック、ウウン、どうすればいいかわからないだけ。」
カラスのゴン「お前のそのフニャフニャしたとこ、まずいのよ!」
子猫「エーン」
カラスのゴン「お前が小さな家の女の人に飼ってもらうって、
________強く心で思わないと、はじまらんのよ!」
子猫「わたしが、決めるの?」
カラスのゴン「あたりまえじゃん!
________強く思ったほうにものごとは動くのよ。
________わかった。」
子猫「強く思うの。
器量が悪くても、声が悪くても、大丈夫なの?」
カラスのゴン「そんなの関係ないよ。
________強く願ったほうに動く。
________お前は、がんばれるの?」
子猫「やってみる。」
カラスのゴン「そうか。がんばるか。」
と言うなり、カラスのゴンは地面をコンコンコンと3回つつきました。
そして「イノチはタカラ」と呪文を唱えました。
すると、あら、不思議。
そこに虹のトンネルが空に向かってできました。
カラスのゴンは虹のトンネルに乗ると、空のかなたへ飛んでゆきました。