カラスのゴンとトラ丸の対話
カラスのゴンが、電線の上から空地をしげしげと眺めていました。そして、歌うように言いました。「どこかな?どこかな?あっ!ちっともアイツがいない。」
そこへトラ丸が、通りかかりました。虎丸は、ちょっと空とぼけてカラスのゴンに声をかけました。「カラスのゴン、何を探しているの?」と、カラスのゴンは困った様子で「子猫を見かけなかったか?」と答えました。
トラ丸「ラッキィの所に預けてきたよ。」
カラスのゴン「エッ、ラッキィの所になんで?」
トラ丸「君が木枯らし君を呼びに行ったと聞いたから。ここにいたら凍えると思って。ラッキィの所に連れていったよ。」
カラスのゴン「エーッ、アイツに聞いたのか!それにしてもアイツは運が強いな!。」
トラ丸「君は思いたったら一直線で子猫の事をちゃんと考えたの!ボクが通りかからなかったらどうしたのよ!」
カラスのゴン「だから、アイツは運がいいの。アイツは困らないようになってるよ。それにしても超金持ちのラッキィの所でアイツは何を聞いてるかネ。」
トラ丸「お金持ちはすばらしいという話だろ。」
カラスのゴン「自分がこれから飼って貰う家は貧乏なのに。アイツ、大丈夫かな。」
トラ丸「大丈夫だよ。案外、あの子猫しっかりしてるよ。」
カラスのゴン「そうかな?人間だって金持ちになりたくてウズウズしてるのに。ほとんどの人間が、金をすべてと思っているのに。」
トラ丸「子猫に聴く耳があれば君の話も覚えているよ。」
カラスのゴン「そうかな。とにかく心が目覚めた人間に飼って貰うのが一番よ!」
トラ丸「心が目覚めた人間なんているの?」
カラスのゴン「どんな人間も目覚めれば
自分の生命が七宝と輝く
様子が観えるよ。
ダイヤモンドよりも
ルビーよりも
自分の生命が尊いことに
気づくよ!
心が目覚めれば
自分の生命が
宝の塔だってことに
気づくよ!」
トラ丸「それは人間だけの話。」
カラスのゴン「いや、オレ達も一緒だよ。
オレ達の生命も宝の塔だよ。」
トラ丸「君はそれを悟ったの?」
カラスのゴン「いや、教えてもらったんだ。ふくろうのポウ様に!」
トラ丸「あの、ふくろうのポウ様・・・・・。そうなのか。」
カラスのゴン「だからオレは目覚めた人間てのを見て見たいのよ!」
トラ丸「それは、ボクも見てみたい!」
カラスのゴン「だからオレは木枯らし君を呼びに行ったんだ。」
カラスのゴンもトラ丸も静かに太陽が山裾に沈むのを見ながら、ゆっくり頷きあいました。