トラ丸は、あわててラッキィに「何をやっているんだよ!」と言いました。
ラッキィはすまなそうに「あっ!悪い、悪い。でもこうすればもとどおり!」と言って、大きな舌で子猫の顔を舐めました。
子猫はうっすらと目を開けました。
すると、そこにはラッキィのやさしい目がありました。
ラッキィは、やさしく「今夜はゆっくり泊まっていきなよ。」と子猫に言いました。
子猫は、こっくりと大きく首を頷きました。
その様子を見て安心したトラ丸は「明日、木枯らしが止んだら迎えに来るよ」と言って帰っていきました。
トラ丸が帰るとラッキィは、身体を宿めて子猫を小屋の中に入れました。
子猫が落ち着くのを待って、ラッキィは話しかけました。
ラッキィ「君は、どこから来たの?」
子猫「わかんない。」
ラッキィ「エッ!ボクは、ペットショップからこの家に買われて来たんだよ。
_____君はわからないの?」
子猫「覚えているのは、ママの側で兄弟たちと気持ちよく寝ていて、目を覚したら___箱の中に一人、原っぱにいたの。
___後は、泣いて泣いてママを探して歩きまわったの。
___怖くてお腹が空いて、後のことは覚えていない。」
ラッキィ「大変だったんだネ。
_____それで、そんなに声がしゃがれてしまったんだネ。」
子猫「ヤッパー声が悪い。」
ラッキィ「すごいダミ声だよ。
_____ボクもママの側で兄弟達と育っていたよ。
_____でも、ある時、人間にママから離されてペットショップのゲージに入れられて売られていたんだよ。
_____ボクは高かったんだよ。
_____人間は、ボク達をアクセサリーのように買っていく。
_____お金持ちじゃないと僕たちは買えないんだよ。
_____ボクの御主人様はお金持ちだよ。」
子猫「あのう、お金持ちじゃないと私達は、飼えないの?」
ラッキィ「お金持ちじゃないと無理だよ。」
子猫「私が、飼ってもらおうと思っている人間は、貧乏だってカラスのゴンは言ってた。」
ラッキィ「貧乏なの?ボク達を飼うのは、お金がかかるよね。貧乏じゃ無理だよ。」
子猫「無理なの?カラスのゴンは大丈夫だって言っていた。」
それを聞いてラッキィは、なぜカラスのゴンは貧乏でも大丈夫だと言ったのだろうと考えました。けれど
「でも、お金がなかったらシャンプーもカットも行けないよ。おいしい御飯も食べられないし、第一、御主人様に飼ってもらえないよ。」
と、ラッキィは大急ぎで言いました。
それを聞いて子猫は考えました。
(本当にそうかな?カラスのゴンは女の人が貧乏だから大丈夫って言ってた。なぜかな?)
と心の中で子猫はつぶやき、ラッキィには「わかんない!」と答えました。